「出産、立ち会うよ」
そう言った。
仕事の予定も調整した。病院までの道も調べた。
よし、準備万端。
……ちょっと待て。
立ち会ったら、お前は何をするつもりだ?
手を握る? 背中をさする? 「頑張れ!」って声をかける? それとも写真を撮る?
どれも悪いとは限らない。
でも、その答えを決めるのはお前一人じゃない。
まず、妻が何をしてほしいか聞け。
「俺も立ち会いたい」と「立ち会ってほしい」は別だ
自分の子どもが生まれる瞬間にいたい。
その気持ちは分かる。父親にとっても大きな出来事だ。
でも、出産するのは妻だ。
そばにいてほしい人もいれば、一人の方が落ち着く人もいる。夫ではなく別の家族にいてほしい場合だってある。
世界保健機関(WHO)は、出産する本人が選んだ付き添いの人による支援を推奨している。大事なのは、誰かが立ち会うことそのものより、本人が望む支え方を尊重することだ。
「夫なんだから当然立ち会うだろ」も、「怖いから俺は無理」も、二人で話す前に結論にするな。
まず、妻の希望を聞こう。
良かれと思ったことが、嫌なことかもしれない
例えば、陣痛中。
「頑張れ!」と言ってほしいかもしれない。
逆に、今は静かにしていてほしいかもしれない。
腰をさすってほしいかもしれないし、触られたくない瞬間もあるだろう。
だから、出産前にこんなことを聞いておく。
「声をかけてほしい? 静かにそばにいる方がいい?」
「手を握ったり、背中をさすったりするのはどう?」
「写真や動画は撮りたい? 撮られたくない場面はある?」
答えが「分からない」でもいい。
出産前に決めた希望が、当日変わってもいい。
そのときは、短く聞いて、反応を見て、合わせろ。
医療スタッフの仕事を奪おうとするな
陣痛が始まると、お前も焦ると思う。
何かしなきゃ。役に立たなきゃ。
でも、分娩の判断や処置は医療スタッフの仕事だ。
勝手に身体を動かそうとしたり、機器に触ったり、スタッフの動線をふさいだりしない。
分からないことは、邪魔にならないタイミングで聞けばいい。
妻が話しづらそうなときに、事前に聞いていた希望をスタッフへ伝えることはできる。ただし、本人の意思と医療上の判断を、お前が勝手に置き換えないこと。
出産は予定通りに進むとは限らない。
立ち会いが途中で難しくなっても、誰かの失敗じゃない。
病院のルールは、お前が確認しろ
そもそも、立ち会いできる条件は病院によって違う。
付き添える時間、人数、事前の講習、体調の条件、撮影の可否。
当日になって「知らなかった」では困る。
病院の案内を自分で読んで、分からなければ確認しよう。
入院の連絡が来たら、どこへ向かうか。夜間の入口はどこか。仕事中ならどう動くか。
ここはお前が段取りできる。
もし立ち会えなくても、連絡や移動、退院後の準備まで父親の仕事がなくなるわけじゃない。
パパになるお前らへ
立ち会い出産は、お前の頑張りを披露する場所じゃない。
「俺、ずっとそばにいたよ」と後で言うための時間でもない。
妻が望むなら、そばにいる。
望まないなら、その希望も尊重する。
声をかける。黙っている。水分を取れるよう手伝う。必要ならスタッフを呼ぶ。
何をするかは、状況によって変わる。
『俺は何をしたい?』だけじゃなく、『妻は何をしてほしい?』から始めろ。
今夜やること
今夜10分、妻に聞いてみろ。
「立ち会ってほしい?」
「そのとき、してほしいことと嫌なことは?」
「写真はどうする?」
そのあと、病院の立ち会い条件を二人で確認する。
決めたことを守るのは大事。でも、当日の気持ちが変わったら、そっちを優先しよう。
立ち会う前に、まず希望を聞け。